
企業が知るべきクッキーバナーの
ダークパターン
回避方法と法規制の最新動向
ユーザーを不利な選択に誘導するクッキーバナーのダークパターンについて、具体例から各国の法規制、
日本のNDD認定制度まで体系的に解説。企業が知るべきリスクと今すぐ実施できる対策について紹介します。
目次
ダークパターンとは何か|
クッキーバナーにおける問題点
まずはダークパターンとはそもそも何か、また、その中でクッキーバナーのダークパターンと問題点について紹介します。
ダークパターンの定義と背景
ダークパターンとは、ユーザーが不利益な選択を無意識のうちに行うよう、巧妙に設計されたWebデザインやインターフェースのことを指します。特にクッキーバナーの領域では、ユーザーの同意を意図的に誘導する手法が問題視されています。
OECDが発表した報告書「Dark commercial patterns」では、ダークパターンを次のように説明しています。
> ダーク・パターンとは、消費者の自主性、意思決定、または選択を覆す、または損なうデジタル選択アーキテクチャの要素を、特にオンライン・ユーザー・インターフェースにおいて、利用するビジネス・プラクティスのことである。これらは、しばしば消費者を欺き、強制し、又は操作し、様々な方法で直接的又は間接的に消費者被害を引き起こす可能性があるが、多くの場合、そうした被害を計測することは困難又は不可能であろう。
引用:ICPEN詐欺防止月間(2023年) | 消費者庁
クッキー・クッキーバナーの基礎知識
クッキー(Cookie)は、Webサイト訪問時にブラウザに保存される小さなデータファイルです。ユーザーの閲覧履歴や設定情報を記録し、次回訪問時により良いユーザー体験を提供するために活用されます。
クッキーバナーは、これらのクッキー使用についてユーザーに通知し、同意を求めるためのメッセージやポップアップを指します。
クッキーの活用メリットは、以下の通りです。
ユーザー/ 企業 |
メリット内容 | 具体例 |
---|---|---|
ユーザー | 利便性の向上 | ログイン情報の 保存、 ショッピング カートの維持 |
企業 | マーケティング 効果の最大化 |
行動分析、 パーソナライズド 広告の配信 |
同意疲れがもたらす問題
頻繁に表示されるクッキーバナーは、ユーザーの「同意疲れ」を引き起こし、結果としてクッキーバナーや個人情報の取り扱いに関する規約を読まないで同意してしまう「形骸化した同意」につながりかねません。この状況を悪用し、ユーザーが十分に内容を確認せずに同意してしまうよう誘導するダークパターンが横行しています。
一般社団法人 ダークパターン対策協会の前進である「Webの同意を考えようプロジェクト」の調査によると、
ダークパターンによる被害額は国内だけで年間1兆円を超えると推計されています。
回避すべきダークパターンの
具体的手法
企業が注意すべきクッキーバナーのダークパターンは、主に以下の四つのカテゴリーに分類されます。
1. 有害な誘導・足止め

クッキーバナーにおけるダークパターンの一つの例は、ユーザーの選択を意図的に操作して、本来の選択肢を足止めする手法です。
- 問題のある実装例
- ・「同意」ボタンは目立つ色で大きく表示
- ・「拒否」するには複数のページを経由し、
複雑な設定が必要 - ・同意は1クリック、
拒否は5クリック以上必要な設計
この手法により、本来は拒否したいユーザーも手間を避けて同意を選択してしまいます。
2. 選択肢を排除した強制的同意

クッキーウォールと呼ばれる手法で、ユーザーに実質的な選択権を与えない設計です。
- 具体的な問題例
- ・同意しなければコンテンツへの
アクセスを完全に遮断 - ・「同意する」ボタンのみ表示し、
拒否オプションが存在しない - ・サービス利用の必須条件として
一方的に同意を要求
3. 包括的同意の強要

個別の同意選択権を奪い、すべてのクッキー使用を一括で承認させる手法です。
- 問題となる設計
- ・必須クッキーとマーケティングクッキーを
区別せず一括同意を要求 - ・個別カテゴリーごとの同意・拒否選択が
できない仕様 - ・一括拒否オプションの欠如
4. 同意撤回後の不正な情報収集
ユーザーの明確な拒否意思を無視して情報収集をし続ける悪質なケースもあります。
- 違法性の高い行為
- ・設定で同意を撤回したにも関わらず
データ収集を継続 - ・見かけ上は拒否の選択ができるが、
実際の動作に反映されない - ・無料ツールに多く見られる
機能的に無効なクッキーバナー
各国の法規制動向と企業への影響
クッキーバナーのダークパターンに対する規制は世界各国で強化されており、違反時の処罰内容や適用基準は地域によって異なるため、企業は自社の事業展開地域における具体的な法的リスクを正確に把握することが重要です。
ここでは、ダークパターンの国内外の取り締まり状況を解説します。
欧米における厳格な規制状況
EU域内では、以下の法律によってダークパターンが厳しく規制されています:
EUの取り組み
**デジタルサービス 法(DSA)** |
ダークパターンの 使用を明確に禁止 |
---|---|
**EU一般データ 保護規則(GDPR)** |
透明性・公正性の 原則に基づく規制 |
特にGDPRは域外事業者にも適用されるため、日本企業も対象となります。違反時の制裁金は「最大2,000万ユーロまたは全世界年間売上高の4%のいずれか高い方」という高額な設定です。
参考:総務省|令和5年版 情報通信白書|欧州連合(EU)
参考:EU(外国制度) GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)
米国の取り組み
米国では、「連邦取引委員会法(FTC:Federal Trade Commission Act)」においてダークパターンを取り締まっています。また、独自の法律でダークパターンを用いて取得した同意を無効とすることを定めている州もあります。
- ・連邦取引委員会法(FTC)による全国的な規制
- ・カリフォルニア州消費者プライバシー法
(CCPA)などの州法による追加規制 - ・テキサス州、コネチカット州、コロラド州、
モンタナ州でも独自の規制を導入
日本の現状と今後の展望
2025年7月時点で、日本にはクッキーバナーやダークパターンに特化した直接的な法規制は存在しません。
しかし、以下の既存法により間接的に規制されています。
法令名 | 規制内容 |
---|---|
個人情報 保護法 |
他の情報と組み合わせて 個人識別可能な場合は 個人情報として規制 |
改正電気通信 事業法 |
外部送信規律により、 通知・公表・同意取得・ オプトアウト機会の提供を義務化 |
一方、民間主導の取り組みとして、2024年9月に設立された一般社団法人ダークパターン対策協会は、2025年に「NDD(Non-Deceptive Design)認定制度」の審査を開始予定です。この制度により、誠実なWebサイト運営を行う企業には認定ロゴが付与されます。
参考:ダークパターン対策協会が発足、誠実なWebサイトの認定制度を25年7月に開始へ
企業が直面するダークパターンのリスクと対策の重要性
企業がWebサイトでダークパターンに該当する実装を行った場合、どのようなリスクがあるのか、法的リスク、ビジネスリスクの観点で紹介します。
ダークパターン使用によるリスク
法的リスク
- ・海外展開時のGDPR等違反による高額制裁金
例えばEU域外の事業者にも適用されるGDPRに違反した事業者には、「最大2,000万ユーロ、または全世界年間売上高の4%以下のいずれか高い方」という多額の罰金が科される可能性があります。
ビジネスリスク
- ・ブランドイメージの大幅な悪化
- ・顧客離れによる売上減少
- ・取引先からの信頼失墜
短期的な利益増加と引き換えに、中長期的な企業価値を大きく損なう可能性があります。
クッキーバナーのダークパターン対策のアプローチ
クッキーバナーのダークパターン化を防ぐために、企業がどのようなアプローチをすればよいのでしょうか。
ここでは三つの項目で解説をします。
1. 事前準備の徹底
クッキーバナーの導入に際しては、事前の準備段階で内容を把握することが不可欠です。
ダークパターンに陥らないクッキーバナーを実現するには、ユーザーの自主的な判断を尊重し、強制や誘導のない公正な選択環境を提供することが必要となります。
実装方法で迷いが生じた際は、一般社団法人ダークパターン対策協会が策定した「ダークパターン対策ガイドライン」を活用することを推奨します。
参考:ダークパターン対策ガイドラインver1.1の公開
2. 将来を見据えた戦略的対応
現在の日本における規制の緩さに安住せず、以下の観点から先進的な対応を検討すべきです。
- ・NDD認定制度への準拠準備
- ・海外ユーザー増加に備えたGDPR対応
- ・法規制強化に先駆けた自主的な改善
NDD認定制度のロゴを取得するためには、項目の一つでもあるクッキーバナーでダークパターンを回避する必要があります。
また、もしも海外ユーザーからの流入数が多いサイトであれば、GDPRなどへの適切な対応も必須です。
これらの対応は無料のツールなどでは対応が難しいケースもあるため、商用のツールを導入することが推奨されています。
3. 組織全体での意識共有
ダークパターン対策は単一部門の課題ではありません。以下の部門間で連携した取り組みが必要です。
- ・法務部門:法規制の動向把握と社内展開
- ・Web・IT部門:技術的な実装とメンテナンス
- ・マーケティング部門:ユーザー体験との
バランス調整 - ・広報部門:ブランドイメージへの影響評価
クッキーバナーやダークパターンへの取り組みを進めるためには関連部門の担当者が理解を深め、全社的な理解促進を図ることが必要となります。
加えて、多くの企業が直面する課題として、クッキーバナーの実装がWebサイトの洗練されたデザインを阻害してしまう問題があります。ダークパターンにならない誠実な同意管理システムと、企業が長年培ってきたブランド価値を損なわない実装手法の両立が、現代企業にとって避けて通れない課題となっています。
このような複合的な課題に対する包括的なソリューションとして、株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)が開発したクッキー同意管理ツール「STRIGHT(ストライト)」が注目されています。このツールは、サイトデザインを損なうことなく、ダークパターン対策協会が公開しているガイドラインにも対応しています。
STRIGHT(ストライト)による
ダークパターン対策の実現
国産のクッキー同意管理ツール
STRIGHTが解決する課題
クッキーバナーのダークパターン対策において、多くの企業が直面する課題を解決するのが、STRIGHTです。
STRIGHTは標準機能でダークパターンを回避しながら、企業のマーケティング活動とユーザーのプライバシー保護の両立が可能です。
国内外の法規制対応と
NDD認定ガイドラインへの対応
STRIGHTは世界各国のプライバシー保護規制に対応しており、企業の法的リスクを大幅に軽減します。
対応法規制
- ・日本の改正電気通信事業法
- ・EU一般データ保護規則(GDPR)
- ・カリフォルニア州
消費者プライバシー法(CCPA)
NDD認定ガイドラインにも対応済み
NDD(Non-Deceptive Design)認定制度のガイドラインに対応した設計となっているため、今後開始予定のNDD認定制度の認定ロゴを取得することを検討している企業にとって、STRIGHTの導入はNDD認定制度のクッキーバナー項目をクリアするプロセスを短縮することに繋がります。
導入の簡単さと継続的なサポート
STRIGHTは導入の簡単さとサポート体制も特長の一つです。
導入プロセスの特徴
- ・契約から実装までオンラインで完結
- ・豊富な導入マニュアルと
日本語完全対応のサポート体制 - ・高機能なのに低コスト
STRIGHTはWebサイトから購入手続きを開始し、契約から実装完了までオンラインで完結できます。また、国産ツールなのでサポートも当然、日本語に完全対応しています。
導入コストが低いということも特徴的です。
中小~大規模サイトでも月額1万円から利用できる低コストなので、Webサイトの流入数が多く、ランニングコストが気になる場合でもSTRIGHTなら安心して利用できます。
運用サポート
- ・法規制更新時の自動テンプレート更新
- ・カスタマイズ可能な柔軟な機能
- ・コンプライアンスチェックサービス
革新的な「出さないクッキーバナー」技術
STRIGHTの最大の特長は、従来の邪魔なクッキーバナーを表示しない「出さないクッキーバナー」という革新的なアプローチです。
従来のクッキーバナーには下記のような課題がありました。
- ・サイトデザインを大きく損なう
- ・ユーザーの離脱率を上昇させる
一方、STRIGHTは標準機能でクッキーバナーを出さない設定やサイトのトーン&マナーに合わせてデザインをカスタマイズする機能が充実しています。
- ・フッターやハンバーガーメニューに
「プライバシー設定」を配置 - ・ユーザーが必要な時にアクセスできる
自然な導線 - ・サイトの美観を全く損なわない実装
Webサイト担当者やマーケティング担当者が感じていた、課題をSTRIGHTの標準機能で簡単に解決することができます。
STRIGHTで実現する
ダークパターン化の回避
今すぐ行動すべき理由
クッキーバナーのダークパターン問題は、もはや「将来の課題」ではありません。海外では既に厳格な規制が始まっており、日本でもNDD認定制度の開始が目前に迫っています。
緊急性の高い課題
- ・NDD認定制度開始
- ・GDPR等による高額制裁金リスク
- ・ユーザーのプライバシー意識の急速な向上
- ・競合他社に先駆けた対応による差別化の機会
海外法対応が必要なWebサイトに限らず、ユーザーから嫌われないWebサイトを構築するためには、ダークパターン対策は日本国内向けWebサイト全般において必要不可欠となっており、もはや他人事ではありません。
クッキーバナー導入でお悩みの企業へ|
STRIGHTという選択肢
「クッキーバナーを導入したいがデザインを壊したくない」
「国内外の法規制に対応したいが専門知識がない」
「ダークパターンを避けたいが具体的な方法が分からない」
これらの悩みをすべて解決するのがSTRIGHTです。日本のIIJが開発した確かな技術力と、弁護士やITセキュリティの専門家などで構成されているサポート体制により、企業のあらゆる課題に対応します。
持続的な顧客信頼の獲得において、企業の誠実な運営は欠かせない要素となっています。STRIGHTの導入により、既存のWebサイトデザインを変更することなく、ダークパターン回避策を実装することが可能です。
プライバシー保護とブランド価値の両立を目指す企業、将来の法規制強化への備えを重視する組織、そして国際的なコンプライアンス基準への適合を求める企業は、STRIGHTの導入をご検討ください。